コラム&イベントレポート

「障害者週間」に思う。

 障害者週間

 

 日本では、12月3日から9日の1週間を『障害者週間 』と定め、毎年この期間を中心に、様々な意識啓発に係る取り組みを展開しています。もとは、12月9日を『障害者の日』と定めていましたが、2004年6月に障害者基本法が改正されたことに伴い、『障害者週間』と改められました。
 加えて、12月9日は、1975年に国連総会において『障害者の権利宣言』が採択された日であり、12月3日は、1982年に同じく国連総会において『障害者に関する世界行動計画』が採択された日でもあります。

 

障害者権利条約~日本の場合~

 

 権利宣言から30年が経過した2006年12月13日に、国連総会において『障害者権利条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)』が採択されました。
 日本は、2007年9月の時点で条約に署名(=条約の内容に国家として賛同)しましたが、批准(=条約の内容を国家として遵守する)に至ったのは、2014年1月20日のことです(2014年2月19日発効)。
 では、なぜ署名から批准までにこれほどの年月がかかったのでしょうか。
 その理由は、日本において、障害者権利条約の内容を保障するための国内法令の整備が必要であったためです。日本は世界でも有数の“先進国”とされていますが、国際的な取り組みに参加するためには、まだまだ不十分な面が多々あるのです。
 2007年9月の条約署名以降、日本は以下のように法令整備を進めてきました。
 2011年8月 障害者基本法改正
 2012年6月 障害者総合支援法成立
 2013年6月 障害者差別解消法成立、障害者雇用促進法改正
 もちろん、こうした各種法令の成立・改正だけですぐに条約の内容が保障されるわけではありませんが、国連で採択された条約は、その条約を批准しようとする国の法令に大きな影響を与えるのです。

 

条約の意義~当事者主体を掲げて~

 

 障害者権利条約は、“Nothing About Us Without Us”という考え方を明文化したものといえます。「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」という訳が有名 かと思いますが、この言葉に、障がいを持つ人々が置かれてきた(置かれている)境遇が集約されているように感じます。
 人が生きるということは、生きていく「その人」が主体となって初めて意味を持ちます。与えられた環境や敷かれたレールに縛られた人生は、幸せなものでしょうか。障がい者が持つ「障がい」とは、社会の偏見や差別意識によって私たちが自ら生み出してしまった宿痾(しゅくあ=長期間にわたる病気)ではないでしょうか。

 

~「生きる」とは~

 

 時の権力者や愚劣かつ稚拙な優生思想による淘汰の危機を何度も乗り越えて、今日も障がいを持つ人々は、自分の人生を自分らしく生きるために、自分ができることに取り組んでいます。人として当たり前に享受できることが、障がいを理由に制限されることがあってはなりません。障害者権利条約は、障がい者を「障がい者」のままにしておくことを許さず、真に平等で開かれた世界の実現を願う、当事者一人ひとりの声なのです。

※二色福祉会では「障がい者」の表記を用いますが、国の法令等についてはその表記のままとしています。

参考資料
外務省人権人道課
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html)
日本ユニセフ協会
(https://www.unicef.or.jp/osirase/back2009/0901_11.htm)